葬儀費用は故人の貯金から支払うことはできる?引き出す際の注意点や方法を解説

ご葬儀には数十万円から数百万円の費用がかかります。決して安い金額ではないため、故人様の貯金を活用したいと考えている方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、葬儀費用は故人様の貯金で支払えるのかという疑問にお答えします。亡くなった方の貯金を引き出す際の注意点や方法もあわせてご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
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葬儀費用は故人の貯金で支払える?
葬儀費用は故人様の貯金や預金で支払うことが可能です。一般的に、葬儀費用は喪主が負担するケースが多いですが、当該費用の負担者は法律で定められているわけではありません。そのため、故人様の預貯金から支払うことも可能となっています。
葬儀にかかる費用
葬儀費用の平均額は1,900,000円前後です。この金額には香典返しやお布施なども含まれています。
ご葬儀の形式や規模によっては1,000,000円以内に収まる可能性もありますが、それでも決して安いとはいえない金額です。故人様の貯金を活用すれば、ご遺族の経済的負担を軽減できるため、選択肢の一つとして検討してみると良いでしょう。
故人の貯金から葬儀費用を払うことで相続税が控除される
葬儀費用は相続税の控除対象となります。よって、故人様の貯金を葬儀費用に充てれば、相続税を減らすことが可能です。
ただし、すべての葬儀費用が控除されるわけではありません。相続財産から控除できる葬儀費用については後ほど詳しくご紹介します。
故人の貯金を引き出す際の注意点は?
葬儀費用を支払うために故人様の貯金を引き出す際は、以下の5つの点に注意しましょう。
● 口座が凍結されるおそれがある
● 相続放棄できなくなることもある
● 手続きに時間がかかる
● 勝手に故人の貯金を引き出さない
● すべての葬儀費用が控除されるわけではない
以下では、各ポイントについて詳しく解説します。
口座が凍結されるおそれがある
一般的に、銀行は口座名義人が亡くなったことを把握すると、その方の口座を凍結します。これは不正利用や相続トラブルを防ぐのが主な目的です。
口座が凍結されると、相続人であっても所定の手続きを行わなければ、原則として貯金を引き出すことはできません。加えて、口座の凍結解除には早くとも1週間程度かかります。場合によっては1ヶ月以上の期間を要することもあり、葬儀費用の支払い期限に間に合わない可能性があるので注意が必要です。
相続放棄できなくなることもある
故人様の貯金から葬儀費用を支払うと、相続放棄ができなくなるおそれがあります。相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の財産を一切相続しないことです。
法律上、相続放棄をしても故人様の貯金を葬儀費用に充てることは認められています。しかし、高額なご葬儀を実施したり、葬儀費用以外の用途でお金を使ったりすると、相続放棄ができなくなることもあるのでご注意ください。
手続きに時間がかかる
故人様の銀行口座は金融機関が名義人の逝去を把握した時点で凍結されます。口座の凍結解除を行うには金融機関と打ち合わせをしたり、必要書類を集めたりしなければなりません。
また、相続人が複数人いる場合は、全員分の署名と押印が必要です。手続きにはそれなりの時間がかかるため、できるだけ早く取り掛かるようにしましょう。
勝手に故人の貯金を引き出さない
故人様の貯金は相続財産であるため、個人の判断で勝手に引き出してはいけません。必要な手続きを踏まずに引き出すと、相続関係にある方とトラブルに発展する可能性が高いため、独断で引き出すことは避けましょう。
すべての葬儀費用が控除されるわけではない
葬儀費用は相続税の控除対象となりますが、すべての費用が控除されるわけではありません。以下の表に、相続財産から控除できる・できない主な葬儀費用をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
● 遺体・遺骨の移送にかかる費用
● 火葬・埋葬・納骨にかかる費用
● 宗教者への謝礼(お布施・読経料・戒名料など)
● お通夜・葬儀・告別式の実施費用(祭壇や送迎バスの料金など)
● その他葬儀に関する諸費用(葬儀場までの交通費や死亡診断書の発行料金など)
● 香典返しにかかる費用
● 法事・法要にかかる費用
● 墓石・墓地の購入費用、墓地の借入料
ご覧のように、相続税の控除対象となるのは「ご葬儀と直接的に関係がある費用」のみです。香典返しやお墓などの費用はご葬儀と直接的な関係がないため、相続財産から控除することはできません。
また、相続税の控除を受けるためには、原則として領収書が必要です。お布施や心付けなど領収書の発行が難しいものについては、以下の内容をメモに記録しておくことで、相続財産から控除できます。
● 支払先の名称・所在地(氏名・住所)
● 支払年月日
● 支払った金額
● 支払いの目的・内容(お布施・心付けなど)
故人の貯金を引き出す方法
故人様の貯金を引き出す場合、基本的には口座が凍結してから手続きを進めることになります。凍結された口座からお金を引き出す方法は以下のとおりです。
● 仮払い手続きをする
● 相続手続きを進める
それでは、各方法について詳しく見ていきましょう。
1.仮払い手続きをする
仮払い手続きを行えば、相続の話し合いが終わる前であっても凍結された口座からお金を引き出せます。他の相続人の同意を得る必要がなく、後述する相続手続きよりもハードルが低いですが、引き出せる金額に制限がある点には注意が必要です。
● 相続開始日の預金残高×3分の1×払い戻しをする相続人の法定相続分
● 1つの金融機関につき150万円まで
上記のうち、少ないほうの金額を引き出すことができます。金融機関による違いもありますが、仮払い手続きに必要な書類は以下のとおりです。
● 被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本・除籍謄本
● 相続人(払い戻しを請求する方)の戸籍謄本・印鑑証明書
● 金融機関所定の申請書
なお、払い戻しには1週間から1ヶ月程度の期間を要します。手続きをしたからといって、すぐにお金を引き出せるわけではないため、早めに行動することが大切です。
2.相続手続きを進める
相続手続きを行えば、銀行口座の凍結が解除され、自由にお金を引き出せるようになります。しかし、この方法は相続の詳細が決まるまで利用できないため、注意が必要です。
また、相続手続きを行う際には、いくつかの書類を用意しなければなりません。主な必要書類は以下のとおりです。
● 被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本・除籍謄本
● 死亡に関する証明書(死亡診断書や住民票の除票など)
● 相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書
● 通帳・キャッシュカード・証書
● 遺産分割協議書または遺言書
● 金融機関所定の相続手続依頼書
なお、払い戻しには1〜2週間程度の期間を要します。仮払い手続きと同様に、すぐにお金を引き出せるわけではないことを理解しておきましょう。
まとめ
葬儀費用は故人様の貯金や預金で支払うことができます。ご葬儀には数十万円から数百万円の費用がかかりますが、故人様の預貯金を活用すれば、ご遺族の負担を大幅に軽減できるでしょう。本記事でご紹介した注意点も踏まえて、葬儀費用の支払いについて改めてご検討いただければと思います。
間違えのない葬儀社の選び方や注意点をはじめ、さまざまな葬儀の知識・マナーを分かりやすくお伝えします。